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宗祖としての親鸞聖人に遇う

片隅に残された声

(藤井 祐介教学研究所属託研究員)

今年一月、幾つかの図書館において、戦前の日本で刊行された仏教雑誌をまとめて閲覧する機会があった。逐次刊行物目録や雑誌目録もあるから、わざわざ実物を手に取り、ページを繰って内容を確認する必要もなかったのだが、書物収集癖のある私は、気になる雑誌をはじめから終わりまで目を通さないと気が済まない。その結果、図書館が閉まる寸前までページを繰り、気になったところに目印の紙を挟み、複写することになる。
さて、そのような作業をしつつ、気になるページがある。
それは読者からの通信欄である。形式的な時候の挨拶、読者が居住している地域の話題など、その内容のみならず、文体からも時代状況がうかがえて興味深い。しかし、そのような記事よりも次のような読者の声の方に、私は強くひきつけられる。

この実社会に直接ぶつかつて生活してまゐりますと、本当に自分の生きる道、進む道が何れかと思ひ迷つてしまふ事実に遭遇いたします、この時に愕然と魂を穿つて如何なるものにも寸毫もさしさわりない純真なものを渇仰しやうといたします、この時に人生最高の宗教に心身を擲つて邁進せなければならぬ。〔略〕この自力によつて進む道を遮つてゐることに心づかせていたゞき、これでは永遠に救はれぬと、又一時は取つく島もない様な状態に陥いり、今までの一つの明滅するあかりを頼りに突進してゐた足元が又グラグラと打ゆらいで真の暗に投出されたやうになります、この時にこそ摂取不捨の御声は何のはからひもなく有難くこの五体に浸み渡り絶大のみめぐみのふところの前にすべてを投すてゝひれ伏し絶対他力の御ゆわれをいよいよ明らかに如実にお示しにあづかりしことを領納いたします〔略〕(『同朋』一九三三年五月号)

これは足利浄円師主宰の雑誌『同朋』に掲載された女性読者からの手紙である。心の中に堆積したものを一気に吐き出すかのように、言葉の上に言葉が重ねられている。しかも、その言葉は、夢や幻を描写しているような、映像的・視覚的な表現に満ちている。信仰をめぐる生の声、衝動的につづられた文章は時代を越えて訴え掛けてくるものがある。
今でこそ自己表現のための媒体は無数にあるが、七十五年前に自らの信仰について不特定多数の読者を前に語る場はわずかであったと思われる。また、投書雑誌なら別だが、雑誌の後ろの方に設けられた通信欄に取り上げられることも珍しいことだと思われる。活字として残された読者の声に今日との連続性を確認することもできるが、その切迫した文体の陰に、表現する機会のないまま消えた無数の声の存在を憶う。

(『ともしび』2008年5月号掲載)

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