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宗祖としての親鸞聖人に遇う

手話から問われたこと

(林 弘幹 教学研究所嘱託研究員)

 テレビの歌番組で「いのちの理由」という歌が流れていた。ベテランの女性歌手が手話をまじえて優しく語りかけるように歌っていた。テレビの字幕に歌詞が表示されており、歌詞と手話が対応していて、手話にまったく知識がない私でもわかるところはあった。そのなかで「幸せ」という部分は、あごに手を当てて下になでるような表現をされていた。この部分はどういう意味でこのような仕草をされるのか、たいへん気になった。インターネットで手話の研究所のホームページを開いて問い合わせたところ、あなたの住んでいる町の近くに県立聴覚障害者センターがありますからそこを紹介しますといわれ、県立聴覚障害者センターに電話した。
 手話を習いたいということではなく、ただ表現の由来を知りたいということだけでたいへん失礼ではないかと伝えたが、どうぞお越しください、ということで直ちに訪問することになった。私のために一人の方が時間をさいて応対してくださった。あごに手を当てて下に長く伸ばすのは「好き」という表現ですと言われた。「幸せ」という単一の表現はありませんので他の表現で表します、ということであった。
 いろいろな話をうかがっているうちに、聴覚障害の人たちが置かれている状況に話が展開していった。昨年の東日本大震災のとき、避難情報などは防災無線で呼びかけられましたが、聴覚に障害のある人たちは聞き取ることができません。それで、今何が起きているのかわからない。聴覚に障害のある人たちは目から入ってくる情報が頼りです。津波などの情報がわからないため、逃げ遅れて多くの人が亡くなりました、という話をされた。さらにその方は、その歌を知りませんので私見となりますが、と断られたうえで、手話に関心をもっていただけるのはありがたいですが、歌に手話をつけて表現するのは聞こえている人たちの文化です、そこに聴覚障害の人がいたのでしょうか。誰を対象に歌っているのでしょうか。そこまで掘り下げてほしい、と言われた。また、手話はコミュニケーションの手段です。役所などの窓口に手話ができる人がいれば、聴覚障害の人たちの世界はずいぶん変わります。医療機関にかかろうと思っても、まず対話が成り立たないとだめです。バリアフリーといいますが、アクセスの問題があります。利用可能にしていくという仕組みが社会の側にあります。社会の側が変わっていくことが大事です。このような多岐にわたる話を聞くことになった。
 「聞こえる人たちの文化です」ということばには強く響くものがあった。「共に生きる」と標榜している私たちであるが、どのような人と共に生きようとしているのか。最も基本的なことが問われているように感じた。終生、世の人々と共に生きることを願われた宗祖親鸞聖人に、身を入れて尋ね直さねばならない。

(『ともしび』2012年10月号掲載)

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