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叔父さんはどこにいるか

(藤井 祐介 教学研究所嘱託研究員)

 吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』が漫画になり、長期にわたってベストセラーとなっている。この小説の柱は、中学生のコペル君と二十代の叔父さんとの対話である。コペル君が家庭や学校での出来事を叔父さんに報告し、それに対して叔父さんが「ノート」(交換日記のようなもの)で応答する。
 二人の話題は多岐にわたるが、それらを貫くものは一つである。それは、世界はつながりから出来ている、という認識である。『君たちはどう生きるか』の冒頭では、つながりを語るための前提として、世界がばらばらに分解される。
 コペル君と叔父さんは霧雨が降る中、デパートの屋上から街並みを眺めている。朝は街の外から人々が集まり、夕方になると街の外へと帰って行く。朝夕の人々の動きは、潮の満ち引きのようだ。コペル君は眼下の人々を観察しながら、一人一人の存在を水の分子にたとえる。

「ねえ、叔父さん。」
「なんだい。」
「人間て……」
と言いかけて、コペル君は、ちょっと赤くなりました。でも、思い切って言いました。
「人間て、まあ、水の分子みたいなものだねえ。」
「そう。世の中を海や河にたとえれば、一人一人の人間は、たしかに、その分子だろうね。」

(『君たちはどう生きるか』岩波文庫、一九八二年、一六頁)

 ここでの会話は、つながりという主題への入口である。一人一人がばらばらの状態では、潮のような動きを生み出すことはない。一人一人がつながることによって、大きな動きとなる。では、一人一人をつなぐものとは何か。……この問いを出発点として、叔父さんは、つながりについて語る。具体的には、地球と他の惑星とのつながり(重力・引力)、生産者と消費者とのつながり(生産関係)、東洋と西洋とのつながり(ガンダーラ文化)などである。
 世界中で「壁」や「分断」が語られる時代にあって、つながりを語ることは難しい。読者は、コペル君と叔父さんの対話を通して、読者自身が語りたいのに語れないことを聞き取る。叔父さんは読者に代わって、つながりを語ってくれる稀有な存在である。読者は叔父さんの言葉に耳を傾けつつ、世の中を見わたして、こう思うかも知れない。……今、叔父さんはどこにいるか。

(『ともしび』2018年7月号掲載)

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