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「無寛容の時代」

(藤井 祐介 教学研究所嘱託研究員)

 最近、「無寛容」という言葉を知った。ゼロ・トレランス(zero tolerance)という英語を日本語に訳したものだ。トレランスは寛容を意味する。ゼロ・トレランスを直訳すれば「寛容ゼロ」ということになる。英語にはイントレランス(intolerance)という言葉もあり、こちらは「不寛容」と訳される。先に不寛容という訳語があり、それと区別するために無寛容という訳語が用いられているのだろう。
 一九八〇年代以降、無寛容は治安対策や教育政策と結びつくことによって、不寛容な社会を生み出す一因となった。無寛容政策は「絶対に(問題とされる行為を)許さない」ことを目指す。一九八〇年代の米国では治安対策の一環として無寛容政策が推進されてきた。ちょっとした秩序の乱れを放置すれば犯罪が増加するという主張(いわゆる「割れ窓」理論)を根拠として、秩序の乱れにつながる行為が法律で禁止された。具体的には、公共の場におけるごみ捨て、つば吐き、路上での飲食、ベンチで寝ることなどが禁止された(鈴木大裕『崩壊するアメリカの公教育──日本への警告』岩波書店、二〇一六年、八一~八三頁)。それまで許されていた行為が禁止されるとともに、法律に従わない人々は公共の場から排除される。無寛容政策は「許さない」と主張するだけでなく、排除することにも積極的である。
 その後、無寛容政策は米国の教育政策にも適用されるようになった。かつて「制服の乱れは心の乱れ」と言われたことがあったが、無寛容政策の下では「制服の乱れ」が停学処分の理由となる。「アメリカ教育省の見積もりによれば、毎年、幼稚園から高校三年までの三〇〇万人以上の生徒が停学処分を受けている」、「明らかな違法行為はごく一部で、ほとんどは教員への暴言、喧嘩、遅刻、制服の乱れ等の逸脱行為であった」(『崩壊するアメリカの公教育』八五頁)。無寛容政策が適用された学校では、間違うことが許されないのである。間違いを繰り返した生徒は学校から排除される。
 こういったことは米国に限ったことではない。近年、無寛容が世界を覆い尽しているかのようである。国内の秩序の乱れだけでなく、自分たちの気に入らない行動を他国がした場合であっても「許さない」と主張する。だが、この世界から他国を排除することはできないのである。それぞれの国は他国との結びつきを維持しながら存在している。その結びつきを断ち切れば、人々の生活は危機に直面する。無寛容の時代に必要とされることは、聞き難いことに耳を傾けるとともに、ふだん意識しない結びつきを再確認することではないだろうか。

(『ともしび』2020年1月号掲載)

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