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2021年1月1日更新

年頭の挨拶 宗務総長 但馬 弘

「苦悩の有情、今を尽くす」           宗務総長 但馬 弘

 新年を迎え、仏祖の御前で身を正し、新たな年を歩み始められたことと拝察します。
 未だ収束の見えない新型コロナウイルス感染症への不安の中、お念仏に生かされている私たちには、どのような未来を創造しようとしているのかが問われています。
 図らずも私たちは、十年前に手掛かりをいただいておりました。それは二〇一一年三月十一日の東日本大震災です。震災から十年という年を迎えますが、その衝撃と悲嘆を忘れることはなく、今に至る苦難に思いを馳せずにはおれません。
 時を同じくして二〇一一年に厳修された宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要の表白を今あらためて拝読しますと、「生死無常の世界を生きている身の事実を知らしめられ、その中で今、御遠忌法要の御仏事をおつとめするご縁をたまわりました」と述べられています。正に震災に遭われた方々に思いを馳せ、悲しみを共に心に刻む御仏事でありました。
 またそれは、大震災の衝撃と悲痛に問われ続ける御遠忌でもありました。その中にあって、危機を逆縁とし、現実を引き受けて起ち上がる時、今を尽くす道が開かれていくお姿を見せていただきました。悲しみを生きる力とするものこそ南無阿弥陀仏の道であり、無碍の一道と言われる所以です。それは人間回復の道でもあります。

   如来の作願をたずぬれば
    苦悩の有情をすてずして
    回向を首としたまいて
    大悲心をば成就せり

   (「正像末和讃」『真宗聖典』五〇三頁)
 
 憶えば、宗祖親鸞聖人もまた、その御生涯において災害や飢饉、疫病を目の当たりにされ、現実を悼まれたお一人であります。その中にあっても「生死無常のことわり(「末燈鈔」『真宗聖典』六〇三頁)」として、「念仏をふかくたのみて、世のいのりにこころいれて、もうしあわせたまうべし(「親鸞聖人御消息集広本」『真宗聖典』五六八頁)」と、いよいよ仏法を深くいただかれたのであります。
 
 今現に、感染症への不安がつきまとう中に生きている私たちですが、門首継承を経て、二年後に宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要の御仏事のご縁をたまわっております。
 冒頭、お念仏に生かされている私たちがどのような未来を創造しようとしているのかと述べましたが、それは「同朋社会の顕現に努める」という一点に尽きるのであります。この言葉は、宗門存亡の危機の中にあって、起ち上がり、宗門が何を願い、どこに向かって歩むのかを明確に表した誓いです。そして、この言葉が「真宗大谷派宗憲」に定められ、本年が四十年の節目に当たります。
 
 同朋社会の顕現を期す宗門として、慶讃テーマ「南無阿弥陀仏 人と生まれたことの意味をたずねていこう」のもと、共に念仏申す生活をいとなみ、慶讃法要をお迎えする確かな歩みの年となることを願って止みません。

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