

他力の庭-東本願寺の庭師コラム-
第1回
庭で働く職人にとって正月は、仕事をせず静かに過ごす時期でした。その分年末はぎりぎりまで仕事をしました。古くなった竹垣を青竹に交換し、松の古葉やモミジなどの落葉樹の残った葉をすべて取り除く。また、雨どい、雨落ちまで全てきれいに掃除することで、庭は春頃まで美しさを保ちます。
家主の方々も年末は大変忙しく、家の修繕や大掃除、おせち料理など万全の準備を整えて新しい年を迎えました。
庭は日々の疲れを癒す場所であると同時に、遠方からのお客様や親戚をもてなすための空間でもあります。
娯楽や食事などさまざまなサービスに溢れ便利な現代。そこを生きる我々にはかつての正月の「招き入れる」風習は、時代にそぐわないものに感じられるかもしれません。それでも「ゲストとホスト」がいて初めて成り立つ庭の機能、空間があるのです。お客様を招き入れる準備を代行する庭師業には「裏方としての側面」があります。
今後の連載では、この裏方の視点から、庭とともに過ごす時間の魅力を伝えていきたいと考えています。
渉成園のお手入れの様子
年末に筧、竹垣を交換すると、青い状態を長く維持できます。節間が長く、まっすぐな真竹は、ホウキの柄や雨どいにも大変便利に使われてきました。タケノコを楽しむのは孟宗竹です。放置竹林が問題になったりしますが、本来竹藪は宝の山です。
鷲田 悟志(植彌加藤造園株式会社)