

第1回
しょうしんねんぶつげ
英訳
Verses on True Acceptance through Recalling the Buddha
和訳
仏陀を思い出すことをとおして、今、私が生きているこの世界を あるがままに受け入れることに関する詩文
宗祖親鸞聖人が、真宗の教えの要を七字一句の偈文に綴った「正信偈」。その味わいについて、新しく連載を担当させていただくことになりました。今月は、自己紹介に加えて、簡単に連載の趣旨と予定についてお話しします。
私は、アメリカ・シカゴの郊外で、大家族の末っ子として生まれ、賑やかな子ども時代を送りましたが、10代に入ってから、種々に悩み始め、20歳になった頃に人生に大いに躓きました。その苦しい中、真宗大谷派と縁の深いシカゴ仏教会を訪れ、念仏の教えを聞くことによって新しい世界の見方を教わり、新しい方向に歩み出すことができました。
その6年後、宗派の関係学校である大谷大学大学院の修士課程(真宗学専攻)に入学し、真宗大谷派の教師資格を取得するとともに、真宗学の研究を進め、博士課程を終えました。
現在は、大谷大学の真宗学科の准教授として、学生とともに親鸞の思想について学び続けています。国際コースのゼミでは、学生と、「正信偈」の本文と英訳を並べて考察することによって、親鸞の思想の真髄に迫ろうとしています。
英訳をとおして、親鸞が伝えようとしていたことの輪郭がクッキリし、より鮮やかに見えてくることが多いと感じています。また内容の濃い仏教用語が連続して述べられる漢文の文章を英語に直すことは、難解な言葉の意味を吟味し、明瞭に表現する重要な機会になります。
そこで今回の連載では、私が親鸞の思想を受けとめて作成した英訳を読者の皆さまにご覧いただきながら、その英訳の実践をとおして得た気づきと、感じた課題についてお話ししたいと思っています。親鸞聖人が「正信偈」において示された言葉が、現代の私たちにどのようなメッセージを持っているかということを一緒に確認していきたいのです。
「正信偈」には合計百二十句があります。これから毎月英訳を掲載し、原文の意味と英訳の語句について解説していきます。
親鸞聖人が「正信偈」において示した真実の世界を、ともに味わっていきましょう。
大谷大学文学部真宗学科准教授