6月27日、東京拘置所で1名の死刑が執行されたことについて、真宗大谷派では同日付で、宗務総長名による宗派声明を発表しました。
死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明
本日、東京拘置所で1名の死刑が執行されたことに対し、遺憾の意を表明します。
真宗大谷派は、かねてより死刑執行の停止と死刑制度の廃止を求めてまいりました。仏教徒として全ての“いのち”を尊重していく立場から、死刑制度を容認することはできません。ここに重ねて、広く社会に対して呼びかけたいと思います。
言うまでもなく、人を殺める行為は許されるものではありません。被害者の無念やご遺族の痛み、悲しみは、察するに余りあります。犯罪に対して憎しみや嫌悪感を抱かれることもあると思います。
仏陀釈尊は、「怨みに対して怨みで返そうとすれば、いつまでも怨みはやむことがない」とお説きになりました。この教えを私たちが受け入れ、実践することは本当に難しいことです。であるからこそ仏は、私たちの苦しみが除かれ、安らぎが与えられることを重ねて願われています。こうした仏の慈悲の眼は、あらゆる人びとに向けられており、深く悲しみ苦しんでおられるご遺族はもちろん、恐ろしい罪を犯した人、どんな人をも含みます。それは、人は誰もが置かれた境遇をきっかけにして罪を犯しかねない危うい存在であり、罪を生む社会は私たち一人ひとりが成り立たせているからです。この痛ましい存在に対して仏の慈悲は注がれています。
仏は私たちに「あらゆる衆生」と呼びかけています。いかなる“いのち”も尊く、殺していい“いのち”も、殺されていい“いのち”もありません。死刑は国家が行う殺人であり、私たちは、犯罪としての殺人も、刑罰としての殺人も望みません。
あらためて、死刑執行の停止と死刑制度の廃止を求め、社会の中で広く論議されることを願います。
2025年6月27日
真宗大谷派宗務総長 木越 渉