お知らせ

「死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明」を発表

宗派声明
2021.12.21

12月21日、法務省が東京拘置所で2名、大阪拘置所で1名の死刑を執行したことについて、真宗大谷派では同日付で、宗務総長名による宗派声明を発表しました。

 

 

死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明

 

 12月21日、東京拘置所で2名、大阪拘置所で1名の死刑が執行されました。

 私たちは、1998年以来、死刑が執行されるたびに「死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明」を宗派として表明し、広く社会に対して死刑制度について議論していくことの大切さを呼び掛けてまいりました。しかし、このたび死刑が執行されたことは、まことに悲しむべきことです。

 尊い生命が奪われた時、私たちは、罪を犯した人を憎み、嫌悪し、犯罪を起こすに至った理由について深く考えることがないままに、極刑を望みます。それは、自分自身は仮に被害者になることはあっても、決して加害者になることはないという思い込みが根底にあるからではないでしょうか。そのことが、自分たちと「凶悪犯」と言われる人とは異質で、死刑もやむを得ないという考えにつながっているように思います。しかし、浄土真宗においては、私たち人間は、誰もが縁によって罪を犯す危うさを抱えた存在であると教えられます。

 私たちは「死刑があるのは当たり前」という社会の中で、死刑についてほとんど知ることなく、考える機会すら持ち得ていない状況にあります。

 もちろん、かけがえのない生命を奪う殺人という行為は決して許されるものではなく、被害に遭われた方やご遺族の痛みや悲しみは想像を絶するものです。しかし、死刑の執行自体は、私たち人間の過ちをさらに重ねることにほかなりません。同時に、罪を犯した人がその罪に向き合い償う機会を奪い、私たちの社会が罪を犯した人の立ち直りを助ける責任を放棄し、共に生きる世界を奪うことになります。そればかりではなく、応報感情をあおり、人々を分断し続けることになるのではないでしょうか。

 死刑の執行によって、被害者遺族が苦しみや怒りから本当に解放されるのでしょうか。私たちは、死刑に関する意見や立場の違いを認め、遺族の悲しみや思いに向き合いながら、この制度について議論していく所存です。そのことが、真の意味で、憎しみを超え、人と人が信頼し合い、安心できる社会へとつながっていくことになると信じます。

 ここに、あらためて今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、今後、死刑執行を停止し、死刑廃止に向けての取り組みが進められるよう願います。


2021年12月21日

真宗大谷派宗務総長 木越 渉

 

●死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明(2021.12.21)【PDF】

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